って、聞きつければ、きっと話せるようになってよ。」
「まア、私なんか駄目よ。私、どうしても話せないの。」
「なアぜ?」
 アアミンガアドは頭を振りました。下髪《おさげ》がぶらぶら揺れました。
「あなたは、お利口なのね。」
 セエラは窓越しに暗い街を眺めやりました。濡れた鉄の欄干《らんかん》や、煤《すす》けた樹の枝などに、雀《すずめ》が飛びかいながら、囀《さえず》っていました。セエラはちょっとの間心の中《うち》で考えてみました。自分は何度となく「お利口だ」といわれたことがある。ほんとにそうなのかしら? ――もしそうだとしたら、全体どういう訳でお怜悧《りこう》なのだろう。――
「私、わからないわ。」
 セエラは相手の丸ぽちゃな、むっくりした顔の上に、悲しげな眼付を見ると、かすかに笑いながら話を変えました。
「あなた、エミリイちゃん御覧になって?」
「エミリイちゃんて、どなた?」
 アアミンガアドは、さっきのミンチン女史のように聞き返しました。
「私のお部屋に入らっしゃいな。見せてあげるわ。」
 二人は一緒に窓席《まどいす》から飛び降りて、二階へ上って行きました。
「ほんと?」客間を通り抜け
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