ぎばなし》の名みたいに聞えるわ。」
「あなた、お好き?」とアアミンガアドは飛び上りそうになっていいました。「私――私はあなたの名前大好き。」
 セント・ジョンは、学者の父を持っているために、いつも苦しめられていました。父は七八ヶ国語に通じ、何千巻の蔵書を暗記しているというような人でした。ですから、父は娘が、簡単な歴史やフランス語ぐらい覚えるのがあたりまえだと思っているのでした。ところが、セント・ジョンは学校の中でも一番頭が悪いほどだったのです。
「こいつは、無理にも覚えさせるようにして下さらなければ駄目です。」と、父はミンチン女史に頼んだのでした。
 こういう訳で、アアミンガアドは、いつでも恥しめられたり、泣かされたりしていました。彼女は覚えたかと思うと、すぐ忘れてしまいました。覚えこんでも、何のことだか一向解らないという風でした。で、彼女は、セエラを感嘆の眼で見るより他ありませんでした。
「あなた、フランス語お上手なのね。」
 セエラは大きな、奥の深い窓際席《ウィンドウシイト》に坐り、両手で縮めた足の膝を抱いていました。
「自家《うち》でしょっちゅう聞いていたから話せるのよ。あなただ
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