っと見ました。話しさえすれば、先生はわかって下さるのだと彼女は思いました。で、セエラは何の飾りけもなしに、美しい流暢なフランス語で話し出しました。女先生《マダム》にはもちろん何をいっているのだかわかりませんでした。が、セエラはこういったのでした。「先生《ムシュー》が教えて下さるのなら、何でもよろこんで勉強します。しかし、この本にあることはとうに知っているということを、女先生《マダム》に申し開きしたいのです。」
ミンチン先生はセエラが語り出したのを聞くと、飛び立つばかりに驚いて、眼鏡越しに、何か忌々しそうに、セエラを見つめました。ジュフラアジ先生は微笑みはじめました。先生の微笑は非常に喜んでいるしるしでした。セエラの子供らしい美しい声が、自分の母国語をこうまで率直に、可愛らしく語るのを聞いていると、まるで故郷にでもいるような気がするのでした。暗い霧のロンドンにいると、いつもは故郷が世界のはてのように遠く思われるのでしたが。‥‥セエラが語り終えると、彼は情愛の深い顔付で、熟語読本を取り上げ、ミンチン女史にいいかけました。
「ねエ先生《マダム》、もう教えるほどのものはありませんよ。この子は
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