「何か物をいいつけられた時、『でも』などというものではありません。さ、御本を見るのですよ。」
セエラは本を見ました。「ル・フィス」は「むすこ」、「ル・フレエル」は「兄弟」。わかりきったことでしたが、セエラはおかしさを耐《こら》えつづけました。セエラは心の中で、
「ジュフアジ先生がいらしったら、わかって下さるでしょう。」と思っていました。
ジュフラアジ先生はじき来られました。大変立派な、賢そうな中年のフランス人でした。彼は熟語読本に身を入れようとしているセエラのしとやかな姿に眼をとめますと、心を惹かれたような様子をしました。
「これが、私の方の新入生ですか?」と、彼はミンチン女史の方へ振り向きました。「うまく行けばいいですがね。」
「この子のお父さんは、大変フランス語を習わせがっているのですが、この子は何だか勉強したくなさそうなのです。」
「それはいけませんね、|お嬢さん《マドモアゼール》。」彼は親切そうにいいました。
「一緒にお始めになりさえすれば、きっと面白くなりますよ。」
セエラは辱められでもしたかのような気持で、立上りました。彼女は大きな青鼠色の眼で、ジュフラアジ氏の顔をじ
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