れから、バスティユに抛《ほう》りこまれた人達だってあるでしょう。」
アアミンガアドは口の中で、
「バスティユ。」といいました。いつかセエラが芝居がかりで話してくれた事がありましたので、アアミンガアドもフランス革命の話だけは覚えこんでいました。
セエラの眼は、いつものように輝いて来ました。
「つもり[#「つもり」に傍点]になるのは、バスティユがいいわ。私はバスティユの囚人なの。私は、もう幾年も幾年もここに押しこめられていたの。世の中の人達は皆、私のことなんか忘れてしまっているの。ミンチン先生は監守で、それからベッキイは――」ふと新しい光が、セエラの眼に加わりました。
「ベッキイは、お隣の監房にいる囚人なの。」
セエラは、昔の通りな顔になって、アアミンガアドの方を向きました。
「私、そのつもり[#「つもり」に傍点]になるわ。つもり[#「つもり」に傍点]になってると、どんなにまぎれていいかしれないわ。」
アアミンガアドは、たちまち夢中になりました。
「そしたら、私にもつもり[#「つもり」に傍点]のお話をみんなしてちょうだいね! 見付けられそうもない晩には、いつでもここに来ていいでしょ
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