まいかと、私気にしていたのよ。」セエラは考え深そうに額に皺を寄せて、「ことによると、それを私に解らせるため、辛い目にあわせられたのかもしれないわ。」
「そんな目にあったって、ちっともありがたくはないと思うわ。」
「私だって、ほんとうはありがたいと思ってるわけじゃアないのよ。でも、私達にはわからないところに、よいものがないとも限らないでしょう。ミンチン先生にしたって――。」
 セエラは疑わしげに――「いいところが、あるのかもしれないわ。」
 アアミンガアドは、怖々《こわごわ》そこらを見廻して、セエラに訊ねました。
「あなた、こんなところに住めると思うの?」
「こんな所でも、こんなじゃアないつもり[#「つもり」に傍点]になれば、住めると思ってよ。でなければ、これは、あるお話の中の場面だと思っていればね。」
 セエラは静かに語りました。うまい具合に空想がまた働き出して来ました。ふいに辛い目にあってからこのかた、セエラは一度もまだ、空想によって慰められたことがなかったのでした。
「もっとひどい所に住んでた人もあるのよ。モント・クリスト伯爵はシャトオ・ディフの牢屋に押しこめられていたでしょう。そ
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