ころの騒ぎじゃアないんだから。」
「まア姉さん、何事が起きたの?」
「クルウ大尉が死んだのさ。一文なしで死んじゃったのだよ。あの気まぐれな我儘娘は、私の居候になったわけさ。」
 アメリア嬢は、手近の椅子にどかりと腰を下しました。
「莫迦々々しい。私はあの子のために何千円ってお金を使ってしまったんだよ。もう一銭だって返しちゃアもらえないんだ。だから、早くあいつのお誕生祝いなんか止めてしまわなければ。すぐ着物をきかえろっていっておくれ。」
「あの、あたし、もう少したってからじゃアいけません?」
「たった今行って話せといってるんだよ。何だい、鵞鳥みたいな眼つきをしてさ。早くおいでったら。」
 アメリア嬢は、鵞鳥と呼ばれることには慣れきっていました。鵞鳥みたいな人間だからこそ、いやなことばかりいいつけられるのだと、自分でも思っていたくらいでした。でも、子供達のよろこんでいる最中《さなか》に出て行って、その会の主人公であるセエラに、お前はもう乞食になり下ったのだ、父の喪のためちんちくりんの黒い服に着かえなければいけない、というのは、何だかいやでなりませんでした。
 アメリア嬢は眼の赤くなるほど、手巾《ハンケチ》でこすると、黙って姉のいる部屋から出て行きました。妹が出て行ってしまうと、ミンチン先生は、思わず大きな声で独言《ひとりごと》をいいながら、部屋の中を歩き廻りました。この一年間、ダイヤモンド鉱山のことは、ミンチン女史にいろいろの未来を想わせていたのでした。ダイヤモンド鉱山の持主が助けてくれれば、株でお金を儲けることも出来ると思っていたのでした。が、今はお金儲けの代りに、自分がセエラのために使って失くしたお金のことを考えなければならないのでした。
「ふん、セエラ女王殿下か。あいつは、まるで女王《クウィン》ででもあるかのように、したい放題にふるまっていたのだ。」
 そういいながら、女史は腹立たしげに、部屋の隅にあるテエブルの傍《かたわら》を掠め過ぎようとしました。と、テエブル掛のかげから、急に欷歔《すすりなき》の声が響き出て来るのに吃驚《びっくり》して、思わず一|歩《あし》身《み》をひきました。
「どうしたというんだろう。」
 すすり泣く声がまた聞えたので、女史は身をかがめて、テエブル掛を捲り上げました。
「こんなところで、立ち聞きしていたな。さっさと出ておいで。」
 這い出
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