と煮え立っています。床には厚い緋色の絨毯が、炉の前には、座褥《クッション》をのせた畳みこみの椅子が置いてあります。椅子のそばには白いテエブル掛をかけた小さな食卓が据えてあって、茶碗や、土瓶や、小皿や、布《きれ》をかけた料理のお皿などが並べられてあります。寝台の上には温かそうな寝衣《ねまき》や、繻子の羽根蒲団がかけてあります。寝台の下には、珍らしい綿入れの絹の服や、綿の入ったスリッパや、小さな本などが置いてあります。それに、テエブルの上には、薔薇色傘のついた明るいラムプが点っているのです。セエラは、夢の国から妖精の国に来たのではないかと思いました。
「消えてなくなりもしないようだわ。こんな夢って、見たこともないわ。」
 セエラは、しばらく寝台の上に肱をついて、部屋の中を見ていましたが、やがて、夜具を押しのけて、足を床に下しました。
「夢を見ながら、床《とこ》から出て行くのだわ。このままであればいい。私はこれがほんとなのだと、夢見ているのだわ。夢じゃアないと、夢の中《うち》で思っているのだわ。魔法にかかった夢のようだわ。私も何だか魔法にかかっているようだわ。きっと私はただ見えると思ってるばかりなのよ。いつまでもそう思っていたいわ。でも、どうでもいいわ。どうでもいいわ。」
 セエラは、燃え立つ火の前に跪いて、火に手をかざして見ました。火に手を近づけすぎたので、熱さのあまり飛びさがりました。
「夢で見ただけの火なら、熱いはずはないわ。」
 セエラは飛び上って、テエブルや、お皿や、敷物に手を触れて見ました。それから、寝台の毛布に触ってみました。柔かな綿入の服を取り上げて、ふいに抱きしめ、頬ずりしました。
「温かくて、柔かだわ。本物に違いないわ。」
 セエラはその服をひっかけて、スリッパを穿きました。それから、よろよろと本の所へ行き、一番上の一冊を開いてみました。
『屋根裏部屋の少女へ、友人より』
 扉にそう書いてあるのを見ると、セエラはその上に顔を伏せて、泣き出しました。
「誰だか知らないけど、私に気を付けて下さる方があるのだわ。私にも、お友達があるのだわ。」
 セエラは蝋燭を持ってベッキイの所に行きました。ベッキイは眼を覚して、緋色の綿入服を着たセエラを見ると、吃驚《びっくり》して起き上りました。昔のままのプリンセス・セエラが立っていると、ベッキイは思いました。
「ベッキイ
前へ 次へ
全125ページ中99ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
バーネット フランシス・ホジソン・エリザ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング