して了ったんです。ああその時です。私に水を呉れたのは私の妻だったんです。お前は……お前丈は私の味方なのかと云って私は妻に泣き縋りました。妻は姉の毛を引張って、後ろ倒しにしてやった事を涙乍らに語りました。私はその涙を見たばかりで一切の立腹をこらえようと決心しました。皆から憎まれている時、たった一人の者に愛された気持を誰か知っている人はありませんか。おお……vと彼は手ばなしで泣いた。その時、傍聴席の一角からも細い女の歔欷が聞えて来たので、その方を見ると、高の妻らしい貧乏な女が顔を脹らして泣いていたのを私達は知った。
「それからY署へ連れて行かれたが、巡査たちが皆兄の方を信用し、私を危険人物のように睨め廻すんです。疑い深い沢山の眼に取りかこまれて、私は又頼り所のない淋しさと憤怒とを感ぜずにはいられませんでした。兄は『あの金ダライは元私のもので、高は勝手に彼の名をペンキで書いて、自分のものだと云い張るんです。』と誠らしく訴えました。警部は直ぐその言葉を信用して了って、はては多くの巡査や、集って来た車掌迄が、さんざん私を嘲笑したんです。いくら私が異国のものだと云って、之はあんまりひどい。ひどすぎ
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