彼が恐らく病的に迄も進んでいた色魔であったことを、私は今漸くにハッキリと思い当たる。私が紫色の室に休んでいた時も、記憶力の鈍い院長は誰か女性を閉じ込めてあるように錯覚して、私のもとへ忍んで来たのかも知れなかった。あの赤くなった顔、私に媚びを作る猫のように光った眼なぞが、一時に私の頭の中を這い廻った。おお、そして院長の子息も斯んな卑しい気質を残らず遺伝していたのである。妹は何と云う哀れな娘であったろう。彼の女は二人の乞食の耻を、一人で受けたようなものではないか。
それだのに、私の復讐心は何故もっと強烈に燃え上らないのか? 私は実に自分が中気病みででもあるかの如く、町や室中をよろめき歩いた。けれど、何時迄待っても妄想が実行に変化する機会を捕え得なかったのは一体何故なのであろうか――私は自分に聞いて見ている――勇気! それから真心! この二つが欠けた所に、興味中心の残忍性丈が狂い廻っているのではないか? そして私は遂に心の弱い青年――悩む事を知って、切り抜ける事を悟れぬ愚かな男に過ぎなかったのであろうか。
興味から来る残忍! それは多くの殺人者に取って必須の要件である。けれど、私の場合で
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