え? 院長の子息! そして院長も?」
「私は此の眼で見たんですからね。」[#底本では「。」が抜けている]
「何を……いまわしい事をですか?」
「妹さんは紫色の室で寝た事があるんですよ。」
「え。あの小さい噴水のある室?」
「ハハハハ院長の大好きな室なんだ。あの室へ入って助かった女はないんだからな。」
「そして、院長の死んだ後には、その子息があの室を使ったのですか?」
「それは見|達《とど》けてないのですが。他の場所で、二人の立って居る所を私は一寸見掛けたのです。そして私は二人の間に何かしら恋愛の火花が行交うているのを感じたんです。勿論その時は感じた丈なんですが……」
「では……あとで、もっと委しく判明したと仰言るんですね。」
「不幸な事に、その通りなんです。」
「何を見たんです。云って下さい。何うか遠慮なしに……」
「貴方! 紫色の室の直ぐ隣りは未だ人の入った事もない不用の室ですが、知って居ますか。あの室は全く何の目的もなしに空いているんです。貴方の妹さんはあの室を一週間に一度丈掃除するのですが、それに掛る時間は何時も二十分なんです。薬局の前を通って行って、又帰って来ると二十分丈何時も
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