だ……。
或る暗い夜、悪い運命の橋が筋交いに十字を切る所の私の室から、私と云う一つの蝋燭が消えたとする。だが、私は死んだのであろうか。思って見て貰い度い。私は橋を何の方角に向って走ったか? 運河の真中を、時計台の鐘が十二時を打つ時、その音の余波で動いて行く一つの舟で、灯が消えたなら、何が起ったのであるかを考えよ。死ではない。唯、死に似た様な強さの情事が想起されぬであろうか?
暗い水面へと続く、黒い大きな石段の様で、私の罪悪は何時初まったかが分明していない。下の半分は寧ろ影に過ぎない。そして水の様に冷かなのである。残りの半分は、前の半分の影で出来、過去に依って漸く色附けられる無色の現在、それが私の持つ現在であった。昔の劇場が今牢獄に変更されたとすれば、それが私の心なのである。
いや、私はもっと燈火の届く所迄這い出して、聴き手に顔を視せよう。私は斯んな醜い人間である。だが、彼の女等は恐ろしく美しかった。実際、彼の女等の為めに、大理石さえが愛嬌を見せて凹む程であった。誇張ではない。私は石の笑靨を経験した。私は元石の様な冷たい人間だったのである。私の心はもうアカンザスの様にフワフワと浮い
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