壺を何う思う……」と老人は首を下へ向け、胃を縮めて貧相に尋ねた。
「奇態な壺ですな。」と私は改めて検べた。高さ二尺程の素焼である。其の他の何者でもない。
「此の唐草文をお前は何う思う。」
「それは飛鳥朝の時代のものですか?」私は此の方面に少し暗かった。
「之はアラビヤ文様だ……」
「先生はそんな事迄知って居るのですか。」
「検べれば分る。分らないものだって、分って来るさ。覚えて置きなさい。今に色々の事が分って来るから。」
「ですが、之には支那文様の趣きがないとは云えませんね。」
「それは寧ろ支那がアラビヤの感化を受けたのだろう。」
院長は壺に就いての説教でもう夢中になって来た。私は此の老人の心持が殆ど解せなくなった。何うして彼はそんなに夢中にならねばいけないのであろうか。彼は何でも、自分の家の庭で之を掘り出したと云っている。そして、彼が之を黙って自分の手に入れて了った事を誰一人知っていないと云っている。然も此の二尺程の器の中には人骨が入っている。彼は臆病な手つきで、それを拾い出して私に見せたのである。
最後に彼は思い出して云った。
「もう時間が過ぎた。」そうして壺を抱えると、悲痛な
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