さい門の所に立って居た。けれども未だ手紙を石の下から出す勇気は起っていぬらしかった。何でも彼の女は胸を高く波打たせて思案しているらしかった。
「そうだ。私の姿が見える間、娘は決して手紙を取り上げはしまい。明日が楽しみだ。明日だ。明日行って見ると、もう石の下には何もない。唯娘の眼がユッタリと頷ずいているのだ。おお之はもうたまらぬ事だ。」
 私はクスクスと笑ったり、又深い理由のない憂いに沈んだりして一夜を明かした。それから何時もの時刻に娘の家へ近附いた。娘はいくら見ても居なかった。悲しい落胆の予感が私の心臓を痛くしめくくった。何うしたのだろう。私は夢中になって生け垣の中をのぞいた。それから石を上げて見た。「アッ!」と私は早くも本式に落胆した。石の下には未だその儘で手紙が残っていた。悲哀と私一流の怨恨とが一時に私の意識を占領した。
 私は手紙をやぶり捨てるために、それを指の先でつまみ上げた。ああその時、実にその時である。
 私は烈しい心の動乱を覚えて、手紙を固く胸の上へ抱きしめた。鼓動は騒いだ。吐息が洩れた。ああ実に之は何たる不可思議であろう。私は手紙の表面へ「悲しいお嬢さん」と書いたのを記
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