う。私達はもう思い合っているのだ。眼丈が体の他の部分より一足先に交際を初めたのだ。」
 斯う云う野合の楽しみときては人生の中で最も大きいものに相違ない。自分の友人の妹とか、主人の娘とか、召使いとか云ったふうな女たちとの恋は未だ中々本統の恋と名附ける事は出来ない。そんなのはむしろいたずらな機会が生んだ無意識的な退屈しのぎに過ぎまい。
 娘の方でも私に焦れている。二人が我慢して、眼を見交している。之は実に胸がつまる程嬉しい事件ではないか。何うしたらあの娘と関係出来るか? その謀みで私は夢中になり初めていた。大胆にやり過ぎれば娘を脅やかして了う。小胆にしていれば、何時迄もあの娘を手に入れる道がない。だのに娘はもう待ちぬいている。手に入れて呉れと嘆願している。そして運命もそれを要求している。神も微笑み乍ら見て見ぬふりをしている。私は何うしても思い切ってやり遂げねばならないのだ。そう思うのは何と嬉しい事ではないか。やり遂げれば成功するにきまっているのだ。
「畜生め!」と私はこみ上げるむず痒さを押しこらえた。もう嬉しくってたまらなかった。それが悪いと誰が云おう。
「よし今日こそは思い切ってやり遂げ
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