そんな風にして卵を売り歩いて了った。あんな卵を二度繰返して買って呉れる主婦は決してないであろう。
私は考え労れてはあの娘を見に行った。私はその時出来る丈上品な身なりをして、汚い卵屋とは似ても似つかぬしとやかな大学生風な青年になりすました。そんな事は私の得手なのである。
娘は私が毎日彼の女の家の廻りをまわるので、もう好く私を記憶し、注意していた。彼の女は私を悪い人間だとは疑っていないらしかった。何故ならば、彼の女は私の事を母親へ告げないでいるのが明らかだった。(娘と云うものは自分の好かない気味悪い男の事は直ぐ母親に告げて助けを乞うのが常である。)[#「(」「)」は、「(」「)」が二つ重なったもの]娘は段々と私がしたい寄って行くのを待っているようになった。私が出掛けて行く時間を遅らすと、彼の女は心配して外の生け垣へもたれて立っていたりした。けれど私が近づくと彼の女は未だ恐れているように庭の中へ逃げ込んで、樹の葉の間から私を窺った。娘の息がはずんでいる事は、彼の女の眼が落ち着いていない事で直ぐ推察されるのであった。
「おおあの娘は私を思っていて呉れるのだ。何て世間は上手に出来ているのだろ
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