? 執拗い男だな。」話し手は無気味に云い放って、うしろから歩みよる私を忌み嫌った。
「話して呉れ! 何う云う訳なんだか。」と私は急に弱り切って、萎れながら口を開いた。
「何を?」
「何うして老人の身代りに幼児がなったのか。又何故その方が好いのか、と云う事だ。」
「もう好い加減に許して呉れよ。お前。その代り、此の本をやるから……」彼はデクインシーの本と云うものを私の手の上へ乗せた。
 話し手と別れて帰って来た時、私はその本を読む勇気も出ない程労れ果てて居た。(次手に云うが、私は珍しく病的に利巧で、英語は、シェークスピアを巫術的に翻訳出来る程、直覚を以て会得していたのである。それから私は父の住む土地では犬殺しを働く事が出来ぬ程、教養のある友を持っていたのである。)[#「(」「)」は、「(」「)」が二つ重なったもの]
 私はどうしてもデクインシーの著書を読む事が出来なかった。そして何故だか判らないが、本の表紙にあの話し手の体臭がこびりついているように思えて、態々近くの河へ、橋の上から本を投げ捨てて了ったのである。
 私は時々発作的に悶えた。妹は足を投げ出して上眼でそれを見ていた。
「兄さん。
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