と呟き乍ら、花と虫とへ行く。そして春になっても尚、蓮根の様に冷たい穴だらけの魂を抱いているらしい。彼の魂は彼の肉体よりも先へ年とっている。千年も生きて了って、もう仕方なくなっている山椒魚が黒く湿気た落ち葉の堆積の下にうずくまって、五分若しくは十分間に一度づつ呼吸している有様に似ているのである。
犬殺しの考え
一寸した遠慮から、私は変態的な心理を持つ鮑吉を自分の友であると云ったが、実は、彼こそ私の友であると同時に、私の本統の父であったのを告白せねばならぬ。耻かしいけれども私はある靴直しの娘と此の変妙な支那人との間に出来た混血児なのである。だが私の心が曲って了った一番初めの原因は父の血のみに帰さる可きではない。私が道を歩く度に、近所の子供から侮辱され、石を投げられ、時にはつめられたりした事が皆その重要な元素であった。彼等は何時でも私を憎み乍ら、注視していた。そして私の汚い日本服の下に支那風な胴着をでも見ようものなら、彼等は犬のように吠えたてて、私の耻を路の真中へと曝け出した。
「お父さん。私ばかりを皆がいじめる。私許りを見詰めている。露路から抜けようとすると待ち伏せをしているし
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