行く前よりも一層多くの悪辣と薄情とが父の心を横行して居りました。
 父を懲役人にした事の悔恨は益す私の胸に響きました。そして何が善で何が悪かも分らなくなって、唯済まないと云う心持で一杯になりました。私が父の命に服従し、父の荒立った心を少しでも慰め、又鎮めようとしたのは実にその為めだったのです。
 私はおハナを習いました。肩を打たれ乍ら色々の秘術を教授されました。ああ細い事は申せません。私は唯上手になって了ったんです。男の中へ入って一度敗れば二度勝つようになって了ったのです。
 ああ父は私にいやらしい事を云いつけたのです。『帳場へ坐ったら、若い女はなる可く膝を崩せ!』というのがそれなんで御座います。そうすると若い男たちの注意力が二つに割れて分れて了う、勝負に必要な思わくや相手の持っている札の種類を皆忘れて了う、と云うのが父の考えなので御座いました。
 私は悲しくて泣いていると、何時も後ろから蹴られました。そして、或夕方、私の家へ隣りから飛んで来たハンケチを、私が拾って返そうとしました時、継母が『一寸お待ち、』と云ってそれを取り上げると、又父が私を蹴りました。
『私は鞠じゃないんだよ!』と
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