る娘はないよ。きっとお前は石女だろう。』と申しました。それはもう詰らない云い伝えに過ぎませんね。いいえ、お話はもっと別の事で御座いましたっけ。(けれども私は石女かも知れませんわ)[#「(」「)」は、「(」「)」が二つ重なったもの]
 一緒に住んで見ると、私の父と申すのは、本統に悪い人でした。ああ、もし、父さえ善良な気質を見せて呉れたなら。私は何もあの復讐の心を抱くようにはならなかった筈ですのに……。いえ、復讐と申すのは、あの事なのです。妊娠中の母を捨てて、音信もしなかった不親切、私はその事から、父を怨み初めるようになったのでした。父さえ母を捨てなかったら、母だって、私を妊婦預り所へ置き去りにして、行衛不明にはならなかったで御座いましょう。母は唯、父の真似をしたのだ。それで私は孤児になったのだ、と斯んな風に感じたのでした。考えれば、私が小鳥屋へ貰われて行ったのは、斯んな父の手で育てられるより、幸福でした。一羽の無心な小鳥が悪いそして凡庸な教育者よりも善い事を教えて呉れると云うのは、もう本統のお話しですもの。だのに、私は矢張り、変化を望み、新らしい世界にあくがれました。孤児である身を悲しむ
前へ 次へ
全146ページ中104ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
松永 延造 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング