#「櫪間」は底本では「※[#「てへん+歴」、749−8]間」]に老いしむる恐れあり、官職賣買の制固より其弊害なきにあらざるも、之により雋傑をして一躍適所に就くを得せしむるものなれば、遽に之を更めて試驗法を採るべきにあらずと。此論は十九世紀の始め議院改良論の英國に起り、先づ人口稀薄の獨立選擧區を罷めむとせし時、ヰリアム・ピットが曾て斯かる rotten borough より選出せられ、少壯にして首相となり得し例を論據として、以て改正の不必要を唱へたると同一軌のものにして、公平を犧牲に供して以て人材の拔擢に便ならしむべしとするものなり。若し夫れ老朽者をして安んじて職を退くを得せしめ、兼て有爲の新進の爲めに路を開くには、其官職の賣買を禁ぜざるを可とすと云ふに至りては、詭辨の甚しきものなり。超群の拔擢を必要とする人材の極めて稀にして甚逢ひ難きにも拘はらず、其僅に指を屈すべき少數者の爲めに、多數者の利益を無視し、其競進の道を杜絶するの不合理なるは論を竢たず。若し夫れ試驗法の採用によりて起こる人材壅塞の弊と俊材拔擢の名の下に行はるゝ嬖幸寵進の害とを比較せば、兩者の利害得失火を睹る[#「睹る」は底本
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