? その神は、自己の独子の犠牲によりて、初めてその怒りを解き、お気に入りの少数者のみを天国に導き入れて、未来永劫、自己に対する讃美歌を唄わせて、満足の意を表している神ではないか! そしてその他の人類には、天国入りの許可証を与えず、悉《ことごと》くこれを地獄に追いやりて、言語に絶した苦痛を、永久に嘗めさせているというではないか。
 教会は教える。神の信仰に入りさえすれば、いかなる堕落漢たりとも、立所にその罪を許されて天国に入り、神の御前に奉侍《ほうじ》することができると。若《も》しもそれが果して事実なりとせば、天国という所は、高潔無比の善人と、極悪無道の悪人とが、互に膝を交えて雑居生活を営む、不思議千万な場所ではないか?
 われ等の教うる神は、断じてそんなものではない。道理が戦慄《みぶるい》して逃げ出し、人情が呆れて顔を反《そむ》けるような、そんな奇怪な神の存在をわれ等は知らない。それは人間の迷信が造り上げた神で、実際には存在しない。しかもかかる神を空想した人物は、よほどの堕落漢、よほどの野蛮人、よほどの迷妄漢であったに相違ない。人類として信仰の革命が、急を要する所以《ゆえん》である。

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