拡充しようとは思わない。よし思っても力量が足りない。所謂同気相求め、同類相集まるの筆法で、彼等はバイブルの中から、自分達の理想に協う章句を拾い出す。一人の予言者で間に合わなければ、多くの中から、御意に召した箇所を選び出し、御意に召さぬ箇所は勝手に放擲して、ここに継ぎ綴《は》ぎだらけの、自家用の啓示録を製造する。すべての宗派の発生は、つまりは斯《こ》うした手続でできたに外ならない。めいめい最初から自分自身の理想ができて居《お》り、経典の中から選《よ》り出した啓示を以《もっ》て、之《これ》を裏書きしたまでである。ただの一つとして、啓示の全部を承認するものはない。何となれば、啓示全部が首尾一貫したものではないからである。かるが故に、啓示の他の章節を選び出した人達と、鼻をつき合わせた時には、文字の意義を歪曲して、勝手次第な解釈(?)を加えるから、すべてがサッパリ訳の分らぬものとなり、折角その啓示を送った霊達、又その啓示を取次いだ予言者達の真意は、全然|損《そこな》われて了《しま》うのである。かくの如くして啓示なるものは、徒《いたず》らに宗派的論争の用具と化し、古経典は、空しく各自の気に入った武
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