を知らなかった。要するに彼は一切の心霊問題に関して、当時の全英国民の顧問であり、又相談相手であった。
一個の人格者としてのモーゼスも、又|間然《かんぜん》する所がなかった。公平で、正直で、謙遜で、判断力に富んでいると同時に、又絶大の同情心にも富《と》んでいた。彼はいかなる懐疑者、煩悶者《はんもんしゃ》をも、諄々《じゅんじゅん》として教え導くにつとめた。当時一般世人から軽蔑されたスピリチュアリズムが、漸《ようや》く堅実なる地歩を、天下に占《し》むるに至ったことにつきてはモーゼスの功労が、どれ丈《だ》け与《よ》って力あるか測り知れないものがある。彼は正しく斯界《しかい》の権威であると同時に、大恩人でもあった。
さてこの『霊訓』であるが、これにつきては、モーゼス自身が、その序文の中で細大《さいだい》を物語っているから、参考の為めに、その要所を抄出《しょうしゅつ》することにする。――
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『本書の大部分を構成するものは、所謂自動書記と称する方法で受信したものである。これは直接書記と区別せねばならない。前者にありては、霊媒はペン又は鉛筆を執《と》るか、若くは片手をプランセ
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