たび肉体を離れたとなれば、縦横無碍《じゅうおうむげ》に、ありとあらゆる悪魔的行為に耽ることができる。
 嗚呼《ああ》盲目なる哉《かな》地上の人類、汝等《なんじら》は神の名に於《おい》て過《あやまち》を犯せる人の子の生命を断ちつつある。思え! 殺された者の霊魂が、汝等《なんじら》に対して、復讐の念を燃やさずに居ると思うか! 汝等《なんじら》がかかる非行を演ずるは、畢竟《ひっきょう》神の何者たるかを知らぬからである。汝等《なんじら》の所謂神とは、汝等の本能が造り出したる人造の神である。大威張りで、高い所に坐り込んで、最高の名誉と最大の権力を享有し、お気にめさぬものがあれば、片っ端から之《これ》を傷け、殺し、又苦しめる大暴君、大悪魔、それが汝等《なんじら》の所謂神である。
 まことの神は、断じてそんなものではない。そんな神は宇宙間の何所《どこ》にも居ない。それはただ人間の浅墓《あさはか》な心にのみ存在する。
 然《しか》り、友よ、地上の獄舎制度、並に死刑制度は、全然|誤謬《ごびゅう》と無智との産物である。
 若《も》しそれ戦争、かの大量生産式の殺戮に至りては、一層戦慄すべきものである。われわ
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