き絶望の冷たさ、咫尺《しせき》を弁ぜぬ心の闇、すべてはただ人肉のうめきと、争いとであった。さすがに霊界の天使達も、一時手を降すの術《すべ》なく、覚《おぼ》えず眼を掩《おお》いて、この醜怪なる鬼畜の舞踊から遠ざかった。それは実に無信仰以上の堕落であった。すべてが道徳を笑い、天帝を嘲《あざけ》り、永生を罵《ののし》り、ひたすら汚泥の中に食い、飲み、又溺れることを以《もっ》て人生の快事とした。その形態は正《まさ》に人間であるが、その心情は、遥《はる》かに動物以下であった。それでも神は、最後に人類をこの悪魔の手から救い出したではないか! これに比すれば、現代の堕落の如《ごと》きは、まだまだ言うに足りない。神と天使の光が加わるに連れて、世界の闇は次第に薄らいで行くであろう。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
問『人類の無智と頑陋《がんろう》との為めに、啓蒙事業は幾回か失敗の歴史を遺して居る。今回も又その轍《わだち》をふまぬか?』
[#ここで字下げ終わり]
真人の出現[#「真人の出現」に白丸傍点]――神の恩沢《おんたく》は汝の想像以上である。今や世界の随所に真理の中心が創設せられ、求む
前へ
次へ
全104ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浅野 和三郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング