ちの又かと思うような、いかにも単純な遊びだが、小さな子供というものは、それはときには目先きの変ったことを求めもするが、それにはすぐ倦《あ》いてしまって、またもとの、いつまで繰り返していても倦きることのないような、家常茶飯《かじょうさはん》的な遊びに立ち返っていくことを好むものだ。
「何かもっと他《ほか》のことでもして遊んだらどうなの? いつも同じことばかりしていないで……」母さえそういう私達を見ながら言うのだった。
 それが私を多少|羞《は》じらわせ、そんな女の子のような遊びを続けることを幾分ためらわせた。が、私はすぐ強情を張って、
「これがいいんだい……」とぶっきら棒に答えて、ねえ、たかちゃんと言うように相手の少女の方を見た。
「…………」たかちゃんは何か気まり悪そうに私の母の方を見上げ、ちらっと微笑《ほほえ》んで、それから私に同意をした。
 たかちゃんはそれから又毎日のように遊びにきた。たかちゃんは私と二人きりだけだと、いつも小さな母親のように私の世話を焼いたりするのが好きだった。最初はそういうおせっかいなやり方が、私には小うるさくて、気に入らなかったが、そのうち不意に、そういうた
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