で歓待して、家の中へ入れてやるものだから、私達が食事の間、私達の傍に仲間の一人といった恰好で坐っている。しかし、私達が分けてやるものがもう何もなさそうなのを見すますと、私達のこわごわしてやろうとする愛撫には目もくれないで、さっさと外へ飛び出していってしまう現金な奴。もうすこし一しょに居て、こうやってファイア・プレェスの前で私がまだいくぶん独身者のように、ときどき一人ごとなど言いながら手紙を書き、女房が心もち物足りなそうな顔をして、編み物をしている傍で、ちょっとの間だけでも、こんな少し淋しすぎる一家|団欒《だんらん》を賑《にぎ》わせていてくれたら好かりそうなものだのに。



底本:「堀辰雄集 新潮日本文学16」新潮社
   1969(昭和44)年11月12日発行
   1992(平成4)年5月20日16刷
入力:横尾、近藤
校正:松永正敏
2003年12月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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