ノ知ったのもそれと一しょだった。


[#地から1字上げ]十二月十日
 この数日、どういうものか、お前がちっとも生き生きと私に蘇《よみがえ》って来ない。そうしてときどきこうして孤独でいるのが私には殆どたまらないように思われる。朝なんぞ、煖炉《だんろ》に一度組み立てた薪がなかなか燃えつかず、しまいに私は焦《じ》れったくなって、それを荒あらしく引っ掻きまわそうとする。そんなときだけ、ふいと自分の傍らに気づかわしそうにしているお前を感じる。――私はそれから漸《や》っと気を取りなおして、その薪をあらたに組み変える。
 又午後など、すこし村でも歩いて来ようと思って、谷を下りてゆくと、この頃は雪解けがしている故、道がとても悪く、すぐ靴が泥で重くなり、歩きにくくてしようがないので、大抵途中から引っ返して来てしまう。そうしてまだ雪の凍《し》みついている、谷までさしかかると、思わずほっとしながら、しかしこん度はこれから自分の小屋までずっと息の切れるような上り道になる。そこで私はともすれば滅入りそうな自分の心を引き立てようとして、「たとひわれ死のかげの谷を歩むとも禍害《わざはひ》をおそれじ、なんぢ我ととも
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