ういつた死後の我々の永遠の住家としてまで、リルケは、人間の悲しみといふものを大事にしてゐる。
死と、悲しみと、子供や動物の無心と、――この三つのものをリルケが悲歌全篇にわたつて人生の重要な要素と考へてゐることは誰にも分かる位、屡※[#二の字点、1−2−22]詩の前面に持ち出されて來てをりますが、さういつた要素をメタフィジカルに書かずに、常に詩人の體驗したものをもつてきて書く。それが此「悲歌」では、――
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Werk des Gesichts ist getan,
tun nun Herzwerk.
目の仕事は仕遂げた、
これからは心の仕事をしよう……
[#ここで字下げ終わり]
と或詩で既にリルケも書いてをりますやうに、ロダンの影響の下に製作した前の「新詩集」のやうな「目の仕事」ではなくなつて來た、そして「心の仕事」として其處に新しい世界を創めてゐる、――そこで此詩中の image が大へん曖昧模糊としたものになつてきてゐるやうです。ですからその數行が君にロダンのダナイデの像の美しさを喚び起したなら、それはそれなりに味つてゐて好いのでありませう。只その形象がさ
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