店で「テスト氏との一夕」の載つてゐる「サントオル」といふ雜誌を見つけて買つてきた。ヴァレリイがピエル・ルイスやレニエやジィド等と一しよにやつてゐた同人雜誌である。英國でビアヅレエイ等のやつてゐた「イエロウ・ブック」と比較して見ると、非常に共通した點があつてなかなか興味が深い。
「テスト氏との一夕」はP・V・といふ筆名で發表されてゐるが、目次にはその表題の下にちやんと nouvelle と銘が打たれてある。「テスト氏」が小説であるかどうかに就いて大ぶ議論もあるやうだが、ヴァレリイ自身はこれを小説として書いたものらしい。
言ひ忘れてゐたが、僕が手に入れたのは「サントオル」の第二號である。雜誌のうしろについてゐる附録で見ると、創刊號の要目に唯Pといふ署名で「詩二篇」とあるのがヴァレリイであらう。それから、第三號豫告にP…V…といふ署名で「ポオ、ニイチェ」とあるのもヴァレリイにちがひないが、そんな題のエッセイはとうとう書かれずにしまつたものと見える。又、近刊豫告には「地の糧」などと竝んでノヴァリスの「青い花」が出てゐる。譯者はアンドレ・ジィド。これは僕の夢ではない。但し、そんな本は世界中搜し
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