Oに佐藤朔君から借りた「LA REVOLUTION SURREALISTE」の一册からの拔萃なのである。何でもその號にはブルトンの一派が「人は夢みるごとくに自殺をする。果して自殺は解決なりや否や?」と云ふ質問を多數の學者や詩人等(その中には僕がその名を知らぬ人が澤山ゐたにはゐたが)に發して彼等のアンケエトを集めてゐたが、その中にムシュウ・テストなるものの囘答が混つてゐるのを見つけたので、僕はすぐさまヴァレリイの小説の同名の人物を思ひ出しながらそれを讀んだ。讀んで見ると、僕がそれまで讀んだいくつかの囘答の中でそれが一番面白かつた。それにその言草がいかにもヴァレリイに酷似してゐるやうにも思へた。ヴァレリイの「テスト氏」が架空の人物なることはその序文でも分るが、他にテスト氏なる人物が實在してゐるといふことも聞いたことがないし、ことによるとこれはブルトン等がムシュウ・テスト[#「ムシュウ・テスト」に傍点]なるものの囘答を勝手に捏造したのではないか? さうすることによつてヴァレリイの「テスト氏」を揶揄したのではないか? そんな疑ひも僕に起らぬではなかつた。眞面目と冗談とのけぢめのなくなつてゐる彼
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