三つの挿話
堀辰雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)常泉寺《じょうせんじ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)この頃|向島《むこうじま》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]
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墓畔の家
これは私が小学三四年のころの話である。
私の家からその小学校へ通う道筋にあたって、常泉寺《じょうせんじ》(註一)という、かなり大きな、古い寺があった。非常に奥ゆきの深い寺で、その正門から奥の門まで約三四町ほどの間、石甃《いしだたみ》が長々と続いていた。そしてその石甃の両側には、それに沿うて、かなり広い空地が、往来から茨垣《いばらがき》に仕切られながら、細長く横《よこた》わっていた。その空地は子供たちの好い遊び場になっていた。そしてその空地で遊んでいる分には、誰にも叱《しか》られなかったが、若し私たちがその奥の門から更に寺の境内に侵入して、其処《そこ》のいつも箒目《ほうきめ》の見えるほど綺麗《きれい》
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