撃=@ge'ome'trie dans l'espace〕 といふ術語に對して la psychologie dans le temps といふ新しい術語を使用してゐるのだが適當な譯語が思ひつかないので假りにかう譯す。)――時間の見えざる實在、それを私は孤立させようと試みるのだ。そのためには經驗が持續してゐることが必要だ。」それで彼の小説は長ければ長いほど完全に近くなるといふ訣なのだ。そして更に續ける。「自分が希望するのは、自分の小説のおしまひの方で、この小説の始まりのところでは全然別箇の世界に住んでゐる、さまざまの人物の間のごく小さな事件が、時間の經過した結果として、あのヴェルサイユ宮殿の緑青のついた鉛のもつてゐるやうな美しさを所有するやうになることだ。」――これは例へば、第一卷の「スワン家の方」あたりではまだ全然別箇の世界に屬するものとして作者から示されてゐるスワン孃とサン・ルウとが、最後の卷になつて(それもごく自然な順序をたどりながら)遂に結婚するに至ることなどを暗示してゐるのだらうが、まあ何といふ遠大な計畫をたてたことか! 僕等なんかだつたらたとへさういふ構想を思ひついたにしろ、と
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