は同意しがたいものがある。やはりジィドやリヴィエェルのやうに、プルウストには事物がひとりでにさういふ風に――あたかも分析したかのやうに――見えたのだと解した方がよくはないだらうか?
――リヴィエェルと云へば、彼のプルウストに關する講演のことを書く書くと云ひながら、いまだに約を果さずにゐるが、この次にはきつと書くつもりだ。
三
[#地から2字上げ]七月十三日
この二三日、僕は君に約束をしたジャック・リヴィエェルのプルウストに關する講演を、なにしろ長いものなので、どうしたら一番要領よくその主要なところを話せるだらうかと考へて見たんだが、どうも名案が浮ばない。しやうがないから、僕はいつか引用した例の「彼の宿命のごとく思はれる受動的《パッシイフ》なるものを能動的《アクティフ》なるものに換へんとする努力」といふリヴィエェルの言葉を中心にして、特に興味深い數節を次に抄してお目にかけよう。
――以下はそのリヴィエェルの講演原稿の大意である。
―――――――――――――――
先づ諸君に、この世にひどく不釣合な、その挑戰に應ずることの絶對に出來ない、ある男
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