フローラとフォーナ
堀辰雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)山査子《さんざし》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]
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プルウストは花を描くことが好きらしい。
彼の小説の中心地であるとさへ言はれてゐるコンブレエといふ田舍などは、まるで花で埋まつてゐるやうに描かれてゐる。山査子《さんざし》だとか、リラだとか、睡蓮だとか……
第二部の「花さける少女の影に」になると、その表題からして作者の花好きらしいことが偲ばれる。ことに子供の時分に、一晩中、ランプの下で、林檎の一枝を手にしてその白い花を飽かず見つめてゐるうちに、だんだん夜が明けてきてその光線の具合でその白い花が薔薇色を帶びてくるところを書いた一節などは、なかなか印象が深い。
「ソドムとゴモル」の中には、一少女がジェラニウムのやうに笑ふところが描かれてゐる。
この間、或る友人に送つて貰つたクルチウスの「プルウスト」を見てゐたら、こんなことが書いてあ
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