事ばかり繰り返して仰《おっし》ゃるものだから、反ってしまいにはその仰ゃっている事に最初ほどの熱意がないようにさえ――そして只それでもって私を苦しめなさるためにのみ、それを私に向って繰り返してばかり入らっしゃるようにも――私には思えたのだった。
「まあ、何んと思し召して、その事ばかり仰ゃるのでしょうね」と私はもうそれを打切らせようとして、「何度も申しましたように、まだほんの子供で、どうやらまあその八月頃にでもなったら、初事《ういごと》もあろうかと心待ちにされている位なのですから――」と、そんな事までずばりと言った。
そう私に言われると、さすがに頭の君も二の句を継げなそうにしていられたが、
「でも、いくらお小さくとも、物語ぐらいはし合うものだと聞いておりますが――」と暫くして言い出された。
「姫はまだそんな事も出来そうもないほど、幼びているのです。誰にでも人見知りをしてしようがない位なのですからね。」
私は簾《みす》ごしに、だんだん稍《しょ》げたようになって私の言葉を聞いていらっしゃる頭の君を見透しながら、更らにすげなく言い続けていた。……
「そう仰ゃられるのをこうして聞いておりますと
前へ
次へ
全66ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
堀 辰雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング