みが名……」
私はつとめて冷めたい顔をしたまま、その紙を徐《しず》かに巻き出していた。道綱は私の前に据わったまま、別にその文を見たくもなさそうにしていた。そしてしばらく、二人は何んとも言わずにいた。しかし、そのながい沈黙は、私にとっては、何か心いちめんに張りつめていた薄氷《うすらい》がひとりでに干《ひ》われるような、うすら寒い、なんとも云えず切ない気もちのするものだった。……
底本:「昭和文学全集 第6巻」小学館
1988(昭和63)年6月1日初版第1刷発行
底本の親本:「堀辰雄全集 第2巻」筑摩書房
1977(昭和52)年8月30日初版第1刷発行
初出:「文藝春秋」
1939(昭和14)年2月号
初収単行本:「かげろうの日記」創元社
1939(昭和14)年6月3日
※底本の親本の筑摩書房版は創元社版による。
※初出情報は、「堀辰雄全集 第2巻」筑摩書房、1977(昭和52)年8月30日、解題による。
入力:kompass
校正:松永正敏
2004年2月27日作成
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