る観念が私のうちにあることを、私は認めまいとは思わない。しかし或る他のことで、私が肯定し、またこれを信じる習慣によって明晰に知覚すると考えたことで、しかも実際には私の知覚しなかったことがあった。言うまでもなく、かかる観念がそれから出て、それにまったく類似している或るものが私の外にあるということである。そしてまさにこの点において私が過っていたか、あるいは私の判断が正しかったのならば、確かにその判断は私の知覚の力によって生じたのではなかったのである。
 しかしそれなら、算術あるいは幾何に関することで、何か極めて単純で容易なこと、例えば二と三とを加えると五であるということ、あるいはこれに類することを私が考察した場合、私は少くともこれを、真であると肯定することができるよう十分に明瞭に直観したのではあるまいか。実際、私がこれについて疑うべきであると後になって判断したのは、おそらく何らかの神が、最も明白なものと思われることに関してさえ欺かれるような本性を、私に付与したかもしれないという考えが私の心に浮かんだからというよりほかの理由によるのではないのである。しかしながら神のこの上ない力についてのこの
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