、耳をふさぎ、すべての感覚を遠ざけ、物体的なもののすべての像をさえ私の思惟から拭い去り、ないし、これはほとんどできないことであるから、少くともかかる像を空虚で偽のものとして無視しよう。そしてただ、自分に話し掛けることによって、またいっそう深く洞観することによって、私自身を漸次私にいっそう知らされたもの、いっそう親しいものにすることに努めよう。私は思惟するものである、すなわち疑い、肯定し、否定し、わずかなことを理解し、多くのことを知らぬ、欲し、欲せぬ、なおまた想像し、感覚するものである。というのは、先に私の気づいたごとく、たとい私が感覚しあるいは想像するものは私の外においてはおそらくは無であるにしても、感覚及び想像力と私が称するかの思惟の仕方は、それらが単に思惟の或る一定の仕方である限りにおいては、私のうちにある、ということは私に確実であるからである。
さてこのわずかな言葉で私は、私が真に知っていることの、あるいは少くとも、私が知っているとこれまでに私の気づいたことの一切を要約した。いま私はおそらくなお私のうちに何か他の未だ私の振り返ってみなかったものがありはしないかどうか、さらに注意
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