そらく神はかように私が欺かれることを欲しなかったであろう、なぜなら神はこの上なく善であると言われているから。しかるにもしこのこと、すなわち私を常に過つようなものとして創造したということが神の善意に反するとするならば、私がときどき過つことを許すということも神の善意と相容れないように思われる、けれどもこの最後のことはそうは言い得ないのである。
 もちろん、余のすべてのものが不確実であると信ずるよりか、むしろそのように有力な神を否定することを選ぶ者がたぶんあるであろう。しかし我々はいまは彼等に反対せずにおこう。そして神についてここで言われた全部が虚構であるとしておこう。さりながら、彼等がどのような仕方で、運命によるにせよ、偶然によるにせよ、物の連続的な聯結によるにせよ、あるいは何か他の仕方によるにせよ、私が私の現に有るものに成るに至ったと仮定するにしても、過つこと思い違いすることは或る不完全性であると思われるからして、彼等が私の起原の創造者をより無力であると考えれば考えるほど、私が常に過つほど不完全であるということは、ますます確からしくなるであろう。この議論に対して私はまことに何ら答うべきも
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