四辺形は円に内接すると考えることは必然的ではなく、かえって私がこれをこのように考えると措定すれば、私は必然的に菱形は円に内接すると認めねばならないであろうが、これはしかし明かに偽である、ように、と。なぜというに、たといいつか神について私が思惟するに至ることは必然的ではないにしても、しかし第一のかつ最高の実有について思惟し、そして彼の観念をいわば私の精神の宝庫から引き出すことが起るたびごとに、私が彼にすべての完全性をば、たといその際私はそのすべてを数え上げず、またその箇々のものに注意しないにしても、属せしめるべきことは必然的であって、この必然性はまったく、後に、存在は完全性であることに私が気づくとき、私をして正当に、第一のかつ最高の実有は存在すると結論せしめるに十分であるからである。これはあたかも、私が何らかの三角形をいつか想像すべきことは必然的ではないが、しかし私が単に三つの角を有する直線で囲まれた図形を考察しようと欲するたびごとに、私がこの図形に、その三つの角は二直角よりも大きくないということを、たといその際私はまさにこのことに注意しないにしても、正当に推論せしめるところのものをば属せしめるべきことは必然的である、のと同様である。しかるに、いったいどのような図形が円に内接せしめられるかを私が考査するときには、すべての四辺形はこれに数えられると私が考えることは決して必然的ではない。否、私が明晰かつ判明に理解するものでなければ何ものも認容しようと欲しない限りは、私はかかるものを構像することさえ決してできないのである。従って、この種の偽の措定と私に生具する真の観念との間には大きな差異がある、そして後者の第一のかつ主要なものは神の観念である。なぜなら、実に、私は多くの仕方で、この観念が何か構像せられたもの、私の思惟に依存するもの、ではなく、かえって真にして不変なる本性のかたどりであることを理解するからである。すなわち、まず第一に、ただ神を除いて、その本質に存在が属するところのいかなる他のものも私によって考え出されることができないゆえに。次に、私は二つまたはそれ以上多数のこの種の神を理解することができないゆえに。そして、今かかる神が一つ存在すると措定すれば、彼は永遠からこのかた存在したし、また永遠に向って存続するであろうということが必然的であるのを私は明かに見るゆえに。そして最後に、私は神のうちに、その何ものも私によって引き去られることも変ぜられることもできないところの多くの他のものを知覚するゆえに。
 しかしともかく、私が結局どのような証明の根拠を使用するにしても、つねにこのこと、すなわちただ私が明晰かつ判明に知覚するもののみが私をまったく説得するということ、に帰著するのである。そしてたしかに、このように私が知覚するもののうち、或るものは何人にも容易にわかるにしても、他のものはしかしいっそう近く観察し注意深く研究する者によってでないと発見せられないが、しかし発見せられた後には、後者も前者に劣らず確実なものと思量せられるのである。例えば、直角三角形において、底辺上の正方形は他の二辺上の正方形の和に等しいということは、かかる底辺はこの三角形の最も大きな角に対するということほど容易にわからないにしても、ひとたび洞見せられた後には、後者に劣らず信じられるのである。ところで神について言えば、確かに、もし私が先入見によって蔽われていなかったならば、そしてもし私の思惟が感覚的なものの像によってまったく占められていなかったならば、私は何ものをも、神より先に、またはいっそう容易に、認知しなかったであろう。なぜなら、最高の実有があるということ、すなわちただそのもののみの本質に存在が属するところの神が存在するということよりも、何がいっそう、おのずから明かであるであろうか。
 そして、まさにこのことを知覚するために注意深い考察が私に必要だったとはいえ、今や私は単にこのことについて、他の最も確実と思われるすべてのことについてと同等に、確かであるのみでなく、さらにまた私は余のものの確実性がまさにこのことに、これを離れては何ものも決して完全に知られ得ないというように、懸っていることに気づくのである。
 すなわち、たとい私は、何らかのものを極めて明晰かつ判明に知覚する間は、これを真であると信ぜざるを得ないがごとき本性を有するにしても、しかしまた私は、精神の眼をつねに同じものに、これを明晰に知覚するために、定著し得ないごとき本性をも有するゆえに、しばしば以前に下した判断の記憶が蘇ってくる、そして、どういうわけでそのものをかように私が判断したかの根拠に十分に注意しないときには、他の根拠が持ち出されることができ、この根拠は私をして、もし私が神を知らなかったならば、容易に
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