根拠ではなくむしろ結論が、無神論者たちのきまり文句から借りてこられた議論でもって駁撃せられているのである。ところで、この種の議論は、私の根拠を理解する人々の前では何らの力も有し得ないからして、また実に、多くの人々の判断は弱くて正しからず、たとい偽であり、理を離れたものであっても、最初に受け取った意見によってのほうが、真で堅固な、しかし後に聞いたその反駁によってよりも、いっそう多く説得せられるものであるから、ここではその議論に対して私が最初に述べねばならぬとすると悪いから、答弁することを欲しない。そしてただ一般的に私は言っておこう、神の存在を駁撃するために無神論者たちによって通例持ち出される一切は、つねに、人間的な情念が間違って神に属せしめられることに、あるいは僣越にも、神の為し得ることまた為すべきことを決定しまた理解することまでを我々が欲求し得るほど多くの力と智慧とが我々の精神に属せしめられることに、懸っており、かくて実に、我々がただ、我々の精神は有限で、神はしかし理解を超え無限であると考えねばならぬことを忘れない限り、かの論駁は我々に何らの困難も示さないであろう、と。
 さて今、ともかく一度人々の判断を知った後、ここに再び私は神と人間の精神とに関する問題を論究し、そして同時に全第一哲学の基礎を取扱おうと思う。しかしその際私は何ら大衆の称賛を、また何ら読者の多いことを期待しないであろう。私はただ本気で私と共に思索し、精神をもろもろの感覚から、また同時にすべての先入見から引離すことができまた引き離すことを欲する人々だけに読まれるように、これを書いたのであって、かような人がまったくわずかしか見出されないことを私は十分に知っている。しかるに私の根拠の連結と聯関とを理解することに意を用いないで、多くの人々にとって慣わしであるように、ただ箇々の語句に拘泥して、お喋りをすることに熱心な人々についていえば、彼等はこの書物を読むことから大きな利益を収めないであろう。そしてたとい彼等がおそらく多くの箇所において嘲笑する機会を発見するにしても、何か緊要なあるいは答弁に値する駁論は容易になし得ないであろう。
 しかしまた他の人々に対しても、私がすべての点において初手から彼等を満足させるであろうと私は約束しないのであるからして、また僣越にも私が何人かに困難と思われるであろう一切のことがらを
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