ないと主人が困ることはよくご承知でせう。
ランク それはわかつてますが、あなたは?
ノラ それは知れきつてるぢやありませんか、私かうやつて貴方とお話するのが何よりも好きですもの。
ランク それだ、私に思ひ違ひをさせたのは、あなたは私にとつちや謎だ。殆んどヘルマー君と同じやうに私がお好きなのぢやないかと、そんなことを思つたのも何度か知れません。
ノラ ね? さうでせう? 自分の愛する人も好きですけれど、話をして面白い人も好きですわねえ。
ランク 左樣――さういふこともいへますね。
ノラ 私、子供の折には自然とお父さんが一番好きでしたわ。けれど下男達の部屋へそつと入つて行くのが大變面白かつたのですよ、第一、下男達は私にお説教をしないでせう? それにあれ達の色々な話を聞くのが非常に面白かつたものですから。
ランク おや、おや、ぢや、私がその下男代りといふわけですね。
ノラ (とび上つてランクの方へ急ぎ行く)あらまあ先生、そんな意味ぢやないんですよ、ですけれど、おわかりでせう? トル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ルトは丁度私に取つては、お父さんのやうなものですからね――
[#ここから3
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