いつてくれ。(ノラに頷いてみせて書類を持つて自分の室に入り扉を閉める)
ノラ (恐怖に度を失つて地から生えたやうに突立つ、そして囁く)あの人は、やるに違ひない。どんなことがあつてもやるに違ひない。いけない、そればかしはどんなことがあつても、どんなことがあつてもさせやしない。そんなことをさせるくらゐならどんなことだつて出來る。あゝ、何とかそんなことにならない方法はないかしら、どうしたらいゝだらう? (廊下のベルが鳴る)ランク先生だ――そんなことをさせるくらゐなら何だつて出來ないことはない。何だつて何だつて。
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(ノラ、兩手で顏を撫でて氣を取り直し、扉の方へ行つて開ける。ランクは外に外套をかけながら立つてゐる。次の臺詞の間に段々暗くなる)
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ノラ 先生、今日は――ベルの鳴り具合で、あなたといふことがわかりますよ。けど、あなた、今はトル※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]ルトの方へいらしてはいけませんよ。忙しさうですから。
ランク あなたはお暇なのですか?
ノラ 私はもう、あなたのためなら、いつだつ
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