ご存じ?
リンデン もと知つてました――よほど前のことです。私どもの町の辯護士の所にゐましたつけ。
ノラ えゝ、さうですつてね。
リンデン あの人も隨分變りましたわねえ。
ノラ たしか結婚をしてうまく行かなかつたんでせう?
リンデン ぢや、今は獨身?
ノラ 大勢の子供をつれてね。さあやつと燃えつきました。(ストーヴの戸を閉め、ロッキングチエアを少し側によせる)
リンデン あの人のやつてる仕事はあまり立派なことぢやあないつてますね。
ノラ さう、さうかも知れません。私知りませんわ。仕事の話なんか止しませうよ――面白くもないから。
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(ランクがヘルマーの室から出て來る)
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ランク (入口に立つたまゝ)なあに/\私にお構ひなく。私はちよつと奧さんの所へ行つてお喋りをして來るから(扉を閉ぢる、リンデン夫人のゐるのを見て)や、失禮、こつちでもお邪魔になりさうだな。
ノラ いゝえ、ちつとも(二人を紹介する)ランク先生――リンデンの奧さん。
ランク あさうですか。お名前は度々伺ひました。さつき此方へ上つて來る
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