も重大なる危機に遭遇したことは疑ひの餘地がない。若しここに新たなる天地が開かれぬならば、生は絶望の淵に沈む外に途はないであらう。しかも吾々當面の關心事である永遠性の問題にとつても、解決の成否は一にこの難關を突破し得るか否かに懸かつてゐる。主體の存在を非存在への沒入より救ひ、滅びぬ現在を確保することは、實在的他者との共同に俟つほかはない。かかる他者は果して又いづこにあるであらうか。ここに吾々は宗教への轉向點に立つ(一)。
 宗教的體驗において主體に對して他者として立つもの――通常「神」と名づけられるもの――の最も基本的なる特徴は、宗教自らの言葉を用ゐれば、「神聖性」である。神は侵すべからず近寄るべからざるもの、あらゆる現實的存在、世間的又は世俗的と呼ばれる存在、より全く隔離したるもの、自己を主張しつつそれへと近寄り侵し來りそれをわが内に取入れようとする人間的主體に對しては、本來の極みなき尊嚴と威力とを發揮して惜氣もなくこれを壞滅の中に葬り去るものである。存在論的に言ひ表はせば、それは實在者、主體にとつては實在的他者であり、飽くまでも妥協せず讓歩せず徹頭徹尾實在性他者性に留まる點において、
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