ッる主體は、實在的他者との關係交渉においてのみ存在する。若し主體がそれ本來の自己主張自己の存在の主張を徹底的に貫徹し得たならば、言ひ換へれば、純粹の自己性において單純性において成立ち得たならば、それの壞滅はあり得ぬことであり、存在論的論證の目指す所志す所は達成されるであらう。しかしながらそのことは全くの空想全くの幻覺に過ぎないであらう。一切の生の源であり基ゐである自然的生は本質的性格として時間性可滅性を示す。文化的生が本來志す所はこの時間性可滅性の克服であり、又そこに或る程度その方向への前進は見られるに相違ないが、目的地の到達は本質的に不可能である。そのことは主體の單純性が不可能であるに基づく。主體が存在の主張を貫徹し得るか否かは畢竟他者との關係が決定する。
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(一) 〔Platon: Phaidon. 78. ―― Plotinos: Enneades. IV, 7. ―― Thomas Aquinas: Contra Gentiles. II, 55. ―― Leibniz: Monadologie. ―― Mendelssohn: Pha:don. Zwei
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