p又は盲從や迎合などを意味する接近は、いつも行はれがちの事ではあるが、双方の品位を損ね純潔を汚すものとして、遠ざくべきである。本書は哲學の立場に立つたゆゑ勢ひ宗教哲學の觀點を取つた。
本書に使用した術語は今日學界における慣例に從ひ異を樹てることは力めて避けたが、止むを得ずただ一つの例外を殘した。それは「將來」と「未來」との兩語に關するものである。それらは通常大體において同義語として使用されるが、今日の學界は、おほかた長き過去を有する習慣の惰性によつてであらうが、「未來」に對して偏愛の念を抱くらしく、計畫や希望の如き積極的態度に對應する場合にさへ、この語を用ゐる傾きがある。これは自ら省るべきことである。立入つた論述は本文(二節、四三節)に讓るが、兩者は少數の場合ながら實質においても必ずしも一致せず、一致する多數の場合においても、「將來」は單純に積極的に事柄の根源的意義を言ひ表はすものとして優先權を要求する。來らむとしてしかも未だ來らぬといふのが「未來」である。派生的現象といふべきである。言語上の表現に徴するも、將來は簡單に動詞の一變化によつて言ひ表はされうるが、「未來」の場合には副詞が
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