可愛いポール
北條民雄
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)従《つ》いて
−−
ミコちゃんの小犬は、ほんとうに可愛いものです。丸々と太った体には、綿のように柔かい毛がふかふかと生えています。
名前はポールと言います。これはミコちゃんが、三日も考えてつけたのでした。ポールと言うのは、フランスの美しいお歌を作る先生のお名前です。
ミコちゃんはポールが大好です。ポールもミコちゃんの言うことは何でも良く聞きます。又ミコちゃんの行く所へは、どんな所でも家来のように従《つ》いて行きます。
「ポール! ポール。」
と呼ぶと、どこにいてもポールは一目散に駈けて来て、ミコちゃんの命令を待っています。
御近所のおばさん達も、ポールを見ると
「可愛いポール。可愛いポール。」
と呼んでは、ポールの一等好きなカルケットをごちそうしてくれます。そしてミコちゃんを見ると
「なんと言うお利口なミコちゃんでしょう。」
と言って、口々にほめてくれるのです。それはポールがまだミコちゃんのお家へ来ない前ポールを助けてやったからです。
ミコちゃんがポールを助けたのは、雪でも降りそ
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北条 民雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング